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なぜ出汁の味が東西でちがう?

2021年8月3日

なぜ出汁の味が東西でちがう?関西と関東「食文化の常識」3選

 日本の二大勢力といっても過言ではない「関東」と「関西」。コロナ禍により、依然として県をまたぐ往来がしにくい状態が続いているが、引越し先で、はたまた出張先で、「あれ?」と疑問に思ったことはないだろうか。

 今回は、関西と関東の「常識」の違いを集め紹介する『最新版 関西人の常識VS関東人の常識』(河出書房新社)より、「食の文化」について一部抜粋してお届けする。「そういえばなぜ……」というものから、「そもそも違うことを知らなかった!」というものまで、知っていると少し自慢できるかもしれない。


出汁の味が東西で異なるのはなぜ?

 関東と関西では料理の味が違うと、よくいわれる。関東の味付けは濃くて、関西では薄い。特にうどんやそばでは、東京のそれは辛くて飲みにくい、と苦手意識を持つ関西人も多い。味付けの違いについては、醬油の好みや野菜の味の違いといった原因が絡み合っているが、その根底には出汁の違いもあるという。

 食材を煮て、うま味成分を溶け込ませる出汁は日本料理の基礎である。その種類は地域によってさまざまで、なかでも人気なのがカツオ節と昆布である。関東ではカツオ節でとった出汁が好まれ、関西は昆布で出汁をとる傾向が強い。東京の味付けは濃くて大阪は薄いといわれるのも、こうした出汁の違いが大きいとされている。

 出汁の好みがなぜ東西で違うのかというと、まずは流通の関係だ。江戸時代の海産物は大坂にいったん集まるので、現地で昆布を入手しやすかった。だが関東ではすぐに昆布が到着しないので、入手しやすいカツオ節が好まれたという。


味が違うのは「水」のせい!?

『最新版 関西人の常識VS関東人の常識』(河出書房新社)

 もうひとつの理由は水の性質だ。関東の水は大部分が硬水。つまりはミネラル分を多く含む水である。関東地方は火山灰土が積み重なったローム層という地層であるため、地下水にミネラルが溶け込みやすいのだ。

 一方、関西の地層は軟らかい粘土質なので、水は軟水だ。こうした水質の違いは農業などに大きく影響したが、出汁の好みまで左右することになった。

 なぜなら、関東の水質では昆布で出汁がとりにくい。先述したように硬水はミネラルが多いのだが、それだと浸透圧が高くなりすぎ、昆布のうま味成分であるグルタミン酸が溶けだしにくい。そのため関東では昆布出汁があまり広まらず、硬水でもうま味が出るカツオ節出汁が主流になったという。

 逆に関西の水はミネラル分が少ないので、浸透圧もちょうどよくなり昆布のうま味成分が溶けやすい。つまり、関東と関西で好まれる出汁が違うのは、江戸時代の環境と水の違いにあったというわけだ。


なぜ関東の玉子焼きは甘く、関西は甘くない?


 関東の玉子焼きは甘い。作るときに砂糖を混ぜるからで、仕上げるときは一回で巻き終える「厚焼き玉子」だ。飲食店では「江戸風」と呼ばれることも多い。

 対する関西では砂糖は使わない。出汁をきかせた卵を何度もひっくり返す「出汁巻き玉子」となっている。食べるときも醬油をかける関東とは違い、何もかけないことが多い。「出汁巻き定食」という玉子焼きメインの定食もあり、東京でも「京風」として出汁巻きを売る店もあるようだ。

 このように味付けが違うので、関西人が関東風を食べたら「妙に甘ったるい」と違和感を訴えることもある。

 関東の玉子焼きが甘くなった理由については諸説あり、江戸時代に作られたという説が有力だ。当時の江戸では卵を食べる機会が増えていて、卵料理の専門店もあったといわれている。しかし卵は庶民が気軽に買えるものではなく、砂糖も簡単には入手できない高級食材だった。それでも江戸っ子は見栄と粋を大事にする。高級な卵と砂糖が手に入れば、豪快に使うのが粋だとされた。


江戸前寿司「玉」というネタも

 また、江戸っ子の間では甘辛い味が好まれていたので、玉子焼きも甘い味付けにされたとする説もある。

 このほかに考えられているのは、寿司との関係だ。江戸から発祥した「江戸前寿司」には玉子焼きをのせた「玉(ぎょく)」というネタがある。卵に魚のすり身や調味料を加えて作るもので、その調理過程で砂糖が使われた。

 江戸時代では食品の保存技術が未発達なので、防腐目的でネタに仕込んでいたのである。その甘い味付けの玉が庶民にも広がり、関東の玉子焼きは甘くなったらしい。しかし家庭への普及は戦後からとする説も根強く、正しい理由は不明なままだ。

 これに対して、関西では出汁文化の影響で、今のような出汁入り玉子焼きになったという。


関西のパンはごはん、関東はおやつ

 パンへの愛は西高東低であり、それは総務省の家計調査にも表れている。しかし東西で違うのは、消費量や購入金額だけではない。

 例えばパンに対する認識だ。関東でのパンはあくまでも間食であるという。なぜなら東京では、明治時代のころに菓子パンをきっかけにパン食が広まったので、今も餡パンのような手軽でおいしいものが人気なのである。

 ところが、関西ではちゃんとした食事として見られている。関西でのパンはホテルやレストランのメニューとして出されていた。そのため、パンは普段の食事として食べるものというイメージが根強く、食べ応えのあるボリューミィなものが好まれるというのだ。つまり関東のパンはおやつ、関西のパンはごはん。そんな好みの違いは、食パンにも表れている。


厚さの違うパンが好まれる理由

 食パンはあらかじめスライスして売られているものも多いが、何枚切りにするかは地方で異なる。関東では6枚切りが主流で、さらに薄い8枚切りもよく売れている。一方の関西では5枚切り、4枚切りといった厚めのものが好まれる。実際、関東では4枚切りにはあまりお目にかからず、関西では8枚切りを置かない店も多い。ようするに、関東は薄切り、関西は厚切りが主流なのだ。

 こうした食パンの好みを分けているのが、先述したパンに対する認識の違いだ。つまり、関東では手軽に食べられる薄切りが人気になった。逆に関西では腹が満たされる厚切りが好まれているという。

 別の説としては「粉もん文化」との関係も考えられている。お好み焼きやうどんなどのもっちりとした食べ物が大好きな関西人は、パンにも同じような食べ応えを求めて、分厚いものを好むようになったという説だ。説の真偽はさておき、いかにも関西人らしい説といえよう。

<TEXT/博学こだわり倶楽部>





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