2025年05月20日
高齢者、引きこもりやすいのは男性?女性?「大事なのは『会う』
入居してからリハビリに励み、車いす生活を脱して老人ホームを卒業していったNさんの話を前回、紹介しました。でも大抵、そんなふうにはいきません。なかなか自室から出ない人もけっこういるのです。
体が思うように動かない。自分でできないから、人にやってもらうしかない…。意思がしっかりしている人ほど、そんな自分が「恥ずかしい、人に見られたくない」と、自室にひきこもってしまうのです。その傾向は女性より男性にみられます。
一般的に老人ホームの入居者は女性が多数。うちの施設は男性が3割強で、これでも男性が多いほうです。引きこもりの予防には、コミュニティーの活性化が一番ですが、女性のように柔軟にはいきません。
まず、唱歌を歌ったり体操をしたりする会に参加してもらうハードルが高い。「なんで俺がこんなことを」と意地を張るのがオチです。対して女性は、子育てしながら歌った経験があるのか「懐かしい!」とノッてくれることが多い。
趣味を通じてつなげようとすると裏目に出る場合があります。昔、趣味が詩吟だという男性を、同じ趣味の他の男性とつなごうとしたら、流派が違って険悪になったことがありました。
さてどうすれば…と考えて始めたのが、まず入居者とスタッフとの個別の関係構築でした。担当スタッフを決め、それまでどんな経験や生活をしてきたのか、出身地や学校、現役時代の仕事内容や赴任先などを聞き取っていきました。
そのプロフィル情報をもとに、例えば、出身大学が同じだったり、海外赴任経験があったりする男性同士を同じリハビリのグループにしてみました。やはり男性には「仕事」の話題が一番。スタッフが仲介して話を振ると、少しずつ会話に花が咲きました。リハビリ室に雑誌や、豆から挽(ひ)いたコーヒーを置き、部屋を出る楽しみを用意することも忘れません。
「お前も80歳になれば動きたくない俺の気持ちがわかるよ」と閉じこもりがちだった車いすユーザーの男性は、この方法で引きこもりを脱しました。入居者が集うカフェで、先に車いすから自力で歩けるように戻った男性に「この歩行器良いから使ってみる?」と誘われ、興味を示しました。
仕組みさえ作れば、男性同士のコミュニティーも復活します。大事なのは、「会う」きっかけづくり。閉じこもってしまうのは、体にも脳にもよくありません。ホームの活気が入居者自身の活気につながっていくのです。(ウェルケアガーデン馬事公苑支配人 晴山和幸)
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